『中国の思想世界』所収。平成18年3月19日.
北宋の士大夫蘇軾門下の所謂「蘇門六君子」の一人秦観は通常詩人・詞人として認識されており、また量的に思想的著作が多く残されているわけではないが、その世界観・人間観は儒学経典と老荘・医学思想(『黄帝内経素問・霊柩』)とを統合的に再構成した独特のものである。本論では、本来的には差異のない本性を持ちながら多様な現象界への対処の仕方に応じて聖人と人民(h百姓)の別が生ずる(「聖人継天測霊論」)とする考えや、外物によって自己の持ち前が失われるのは「心」の問題に由来するとし、老荘と医家思想を援用して説く「心説」を中心に論じた。