夏目漱石『虞美人草』に見える漢詩句について
田中 正樹
夏目漱石の長編小説『虞美人草』冒頭の甲野欽吾と宗近一が比叡山に登る場面に於いて、甲野さんが嘯く「万里の道を見ず」「只万里の天を見る」の詩句に関して、従来「甲野の述懐であり即興の句」、或いは「出典不詳。当時の漱石の心境を述べたもの」等と見なされてきた。しかし、実際には唐の詩人孟雲卿の古詩「古別離」の第三・第四句として見えるもの(句の順序は逆)であることを指摘し、その詩の典拠及び小説構成上の意味について若干の考察を加えた。
二松学舎大学東アジア学術総合研究所集刊
二松学舎大学東アジア学術総合研究所
第 55集