蘇軾に於ける「順」・「逆」の思想 ―三教調和論の核心―
蘇軾の思想の特徴の一つは、儒教・仏教・道教の三教の一致を説くことである。本論文は、三教一致論の基本的な構図として「順―逆」が考えられていることを明らかにしようとするものである。「逆」とは、現象界からその現象が生み出す根源へと遡る方向、失われた本来性を回復する方向であり、又死から生へと帰る方向である。蘇軾は、現実態として物に蔽われている心を本来の姿にもどす為には、非本来性の除去、即ち「逆」行プロセスが必要であり、その点に関しては、言葉は異なるが、儒仏道三教の一致する所だ、と説いている。
『文化』
東北大学文学会
第54巻
第1・2号
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