北宋に於ける中庸と皇極―契嵩と蘇軾―
北宋思想界に於て、「中庸」及び『尚書』に由来する「皇極」に関する論が多く見られるが、この両者を結び付けて論じているのが士大夫蘇軾と禅僧契嵩である。従来「皇極」は政治の場に於ける「天下の中正」の意とされるが、二人はそれをより普遍的・原理的な概念として把え直し、『中庸』に説かれる内在する天理としての「未発の中」と連関させることで一種の天人相関のメカニズムを考えるのが共通点である。その際、蘇軾の論の方が根源的主体に対する考察がより深化していると考えられ、思想史に於いて重要な役割を果たしたと考えられる。
集刊東洋學
中国文史哲研究会
第62号
52
71