「中世前期における童子信仰の隆盛と末法思想」
本稿では、童子信仰が末法思想を歴史的背景の一つとして隆盛に赴いたことを明らかにした。先行研究では、末法の世では阿弥陀仏が絶対的救済力を持つ仏として信仰されていたことを前提として進められてきた。しかし末法の世に生きた人々は、阿弥陀仏は穢土である娑婆世界には決して触れてはいけない存在だと認識していたのである。末法が強烈に意識された世では、脇侍や眷属、とりわけ童子の存在は欠かすことができなかった。童子は、他の姿をした存在には見られないほどの能動的救済を行なう存在であった。末法の世では、仏菩薩の側からの能動的救済
『仏教史学研究』
仏教史学会
第43巻
第1号
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