固有名の空白、から-田山花袋『蒲団』前夜-
『蒲団』(明治40年)の発表をきっかけに、評者のみならず花袋本人までもが事実とは異なる認識を持ったことを論じた。『蒲団』によって花袋が一躍自然主義の旗手へと躍り出たとする従来の論は、明治40年夏前後の同時代評を丁寧に読み進めると認めることは出来ない。『蒲団』発表前に花袋は「発見」されていたのであり、『蒲団』は、それ以前の「田山花袋」を抑圧したテクストとしても理解されるべきであることを論じた。
日本近代文学
日本近代文学会
第53集
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