視覚で捉えたサマを言い表すことの本質をめぐる「サマ名詞」論にして、名詞の形式化・接尾語化・機能語化の具体的事例に関する実証的な記述研究。
サマ描写に伴われる主観的な判断性と詠嘆性。「それしきの」「あれていの」など接尾語用法に価値的な含意が生じる機序としての、例示・類似と同類認定。「皆式(かいしき)分からない」「本式(ほんしき)に寝る」「小体(こてい)な店」「憎体(にくてい)に言う」ほか前近代的表現に見られる、語構成上の特性。字音形態素としての一般的な用法から外れる「足して二で割る式の妥協」「人を見たら泥棒と思え式に警戒する」などの位置付け。形式名詞としての、範疇付与の働きや包摂性の発揮。それら種々の用法における意味機能の本質と相互の関連性について解明し、全体像を体系的に整理する。
「ていたらく」における意味用法の変化や、近年特に言説の混乱が顕著な「世間体」の源流・本義と歴史的変容など、身近な日本語表現をめぐって初めて実証的に明らかにされる新たな事実も、本書には数多く含まれる。