藤原定家が『新勅撰和歌集』『百人秀歌』に自撰し、『百人一首』所収歌として著名な「来ぬ人をまつ帆の浦の夕凪に焼くや藻塩の身も焦がれつつ」について考察した。
本歌である『万葉集』巻六の笠金村歌が、定家の時代の訓読に従うと、現在の万葉研究においては作者自身の比喩であるとされてきた「たわやめの」以下の表現が、淡路島にいる海人乙女の形象と考えられる。
一方、これまでの研究によって『万葉集』巻一・五番の軍王歌、『後撰和歌集』恋四・八五一番の承香殿中納言歌、『伊勢物語』第八十七段、『新勅撰和歌集』雑四・一三三五