藤原定家が『御室五十首』で詠んだ「春の夜の夢の浮橋途絶えして峰に別るる横雲の空」について、以前論じた定家の宇治十帖摂取を踏まえながら、定家が『源氏物語』のどのような点を和歌に詠み込もうとしたのか、そのためにどのような表現が選び取られているのか「途絶え」という表現を中心に考察した。定家の『源氏物語』摂取が物語の一場面のみを切り取ることにとどまらず、広く巻全体、場合によっては複数巻に及ぶ内容を踏まえた上で行われていることは従来から指摘されているが、当該歌もそのような一首であることを、『御室五十首』及び『新古今