藤原定家と『源氏物語』――宇治十帖の摂取――
藤原定家の『源氏物語』宇治十帖摂取歌について考察を加えた。先行研究の指摘通り、定家が物語を読み込み、その展開も踏まえ、自詠の表現を選択していたことを確認した。主人公薫が決して愛する人と結ばれることのないこの悲恋の物語に、定家が並々ならぬ関心を示していたことを、詠まれた作品から導き出した。和歌における凝縮された表現の内に、物語に込められた心情やその展開を紡ぎ出そうとしている定家の試みを明らかにした。
『文学・語学』
第204号
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