田中正樹編『中国古典学の再構築』所収。『容斎随筆』における三国時代に関する章段から著者洪邁の三国志観を探った。曹魏に関する章段が最も多く、洪邁も北宋以前からの三国論を踏襲して曹魏を中心に三国時代をとらえていたことが分かる。また、曹操を評価する章段も諸葛亮を評価する章段も存在し、そもそも文中に「正統」という語が見られないことから、洪邁の三国論は欧陽脩や朱熹以前の古い型に属するといえる。ただし、『容斎随筆』の三国志観は、小説『三国志演義』の思想的傾向につながる貴重な一片と位置づけられることも指摘した。