『三国志演義』の重要人物である関羽と貂蝉であるが、作中この二人の間には何の関係も生じない。
一方で「関羽が貂蝉を斬る物語」というものが存在する。『三国志演義』に採用されなかったこの物語は、現在、戯曲・弾詞・民間伝説の形で伝わっている。ここでの貂蝉は、貞節のない悪女として描かれている。そして関羽は女色に惑わされることのない正義感の強い英雄として描かれる。しかし『三国志演義』の登場後、義を重んじ愛国心に溢れる女性としての貂蝉像が定着し、それが「関羽が貂蝉を斬る物語」における貂蝉像と齟齬をきたすこととなった。