南方抑留―日本軍兵士、もう一つの悲劇―

林英一

南方抑留の実態に日本軍兵士の目線で迫った。今日の東南アジアに相当する南方地域は日本の占領地であったので、日本兵たちは抑留の「被害者」であると同時に占領の「加害者」でもあるという両義的立場に置かれ、ソ連軍によるシベリア抑留や民間人の引揚のように被害一辺倒では語り得なかった。その結果、南方抑留はシベリア抑留や引揚の記憶の陰に隠れ、研究が遅れていた。こうした研究史の空白を埋めるべく、本書ではインドネシア、シンガポール沖、ミャンマー（ビルマ）、フィリピン、ラバウルの各収容所に抑留された日本兵たちが当時綴った日記類や筆者が新たに発掘した未公開の一次資料を用いることで描き出した。（236頁）

新潮社