|
基本情報
高度成長が終わった日本列島を改造しようとした田中角栄、豊かな社会に帰還した日本兵、アジアとつながろうとしたひとびとを通じて1970年代の日本精神史を描いた。 (編者:杉田敦310頁) (担当部分:小野田寛郎と横井庄一―豊かな社会に出現した日本兵―、217~243頁、単著) 1972年と1974年に遅れて帰還した残留日本兵の横井庄一氏と小野田寛郎氏に対する戦後の日本社会の反応を検証した論文である。日本のひとびとが彼ら帰還兵に好奇と称賛の目を向けたのは、高度成長を経た社会のなかでノスタルジーの対象となったからである。他方でふたりが哀れみや反感をもたれたのは、敗戦後もアジアは昔のままであるとの日本人の帝国意識が継続していたからだ。ふたりが戦後の日本社会にとって両義的な存在であったことを示した。 |