描写としての<聞く>こと-田山花袋『重右衛門の最後』の構造-
『重右衛門の最後』(明治35年)における描写を、<聞く>ことを中心に分析を試みた。従来描写はおもに<視覚>を中心に論じられてきたが、『重右衛門の最後』は、むしろ<聴覚>によって様々な描写が行なわれているテクストであるようにみえる。テクストを<聞く>ことに焦点を当てて分析し、そのような性格がテクスト全体の構成と関係していることを指摘した。また語りの構造による読者の読みの可能性についても言及した。
十文字国文
十文字女子短期大学国語国文学会
第7号
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