王陽明の「物」の周辺―「物各付物」を中心に―
王陽明の学問の独自性は、「心即理」「知行合一」「致良知」説に顕著に見られるが、それをより説得力のあるものとしているのは「物」に対する独特の知見であるように思われる。王陽明は、「物」とは先験的な「良知」が現象をわれわれに現象するその形式=指向的なもの=「主客の関係性(関係の場)」として捉えるという発想を導入し、「格物」解釈も朱熹とは大きく異なる。この「物」解釈を、陽明の弟子は二程頤の語「物各付物」を手がかりに理解しており、南宋代以降もこの語は多くの著作に見られるので、その用法を中心に、特に心と現象との関係の
『陽明学』
二松学舎大学東アジア学術総合研究所陽明学研究部
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