『洞院摂政家百首』(『拾遺愚草』では『関白左大臣家百首』)は晩年の定家による百首歌として注目される。『新勅撰集』の撰者に任じられていた定家としては力を注いだ百首歌であり、評価の高い作品も生み出されている。その中の「雪」題の一首「誰ばかり山路を分けてとひくらんまだ夜はふかき雪のけしきに」は『源氏物語』総角巻で姉大君を亡くした中君の弔問に匂宮が雪の中を来訪したことを踏まえて詠んでいると『細流抄』で指摘されている。このことの是非について、同百首では『伊勢物語』の様々な章段の摂取歌が見られるので、それらの作品と比