ソ連・モンゴル、中国、仏領インドシナ、タイ、英領マラヤ、蘭領東インドと、アジア各地に離散した推定1万人の残留日本兵の100の事例を収集し、類型化を図った啓蒙書である。「残留日本兵」というとグアム島のジャングルに潜伏していた横井庄一氏と、フィリピン・ルバング島のジャングルに潜伏していた小野田寛郎氏のイメージが強い。しかし事例研究の結果、現地住民と無関係であった横井氏と、現地住民と敵対した小野田氏は例外的な存在であり、大多数は現地社会とのかかわりのなかで市民権を得るか、遅れて帰還していたことが明らかとなった。(252頁)