奈良時代の係助詞「なも」について、いわつる五国史の後半の二つの書である『日本文徳天皇実録』『日本三代実録』の宣命を資料として、先行する三つの史書の宣命や平安時代の和文資料に見られる「なも」「なむ」との比較を交えつつ、分析を試みた。その前接語や結びの述語の特徴や、「なも」が原因や理由を述べる際に用いられ、「是以」「故是以」等で始まる帰結の文が続くといった傾向は、これらの資料においても確認できた。また、前接語に副詞・数量詞が見られたり、結びの助動詞の種類の増加が見られたりと、徐々にその使用が広がりつつあると捉