二人称形式の〈私小説〉――小島信夫『疎林への道』論
山口直孝
小島信夫が『群像』1966年1月に発表した短編を論じたもの。郊外に住む再婚夫婦の関係を扱った作品が主人公への呼びかけを多用する形式を採用していることに注目し、従来の〈私小説〉における作り手と受け手との安定した関係を揺さぶる狙いがあることを説いた。同時に抽象的な記述が〈私小説〉的な読解を誘発する事情についても触れ、六〇年代後半における小説受容のあり方を確認した。
日本文芸学
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