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基本情報
大西巨人における〈東ヨーロッパ〉の受容を政治と文学との二つの面から考察したもの。大西巨人において、〈東ヨーロッパ〉(ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ブルガリアなど)は、「政治と文学」のいずれにおいても重要な意味を持つ。公表した最初の文章に『キュリー夫人伝』を引き、被占領国の民であるという自覚から出発した巨人は、日本共産党員として活動する中で、〈東ヨーロッパ〉の諸国の人民民主主義の展開にソ連の一党独裁体制とは異なる革命の可能性を見出していった。巨人はまた、〈東ヨーロッパ〉のレジスタンス文芸に学ぶだけでなく、状況から逸脱する人間を描く「観念小説」をも受容していた。カフカを参照した晩年の長編小説『深淵』は、人民民主主義の実現を現代日本において目指した「観念小説」であり、〈東ヨーロッパ〉の受容の持続を体現している。 |