「何もない」現在を見つめること――文芸時評家としての湯地朝雄
コミュニストとしての立場を堅持して理想の芸術を追究した文芸批評家湯地朝雄の仕事のうち、時評家としての仕事を考察したもの。ナショナリスティックな主張が実在しない過去を理想として現在を否定したのに対して、湯地は論理的な誤りを立体的に指摘しつつ、文学の理想はかつてありえたことがなく、未来において実現されるべきものと説いた。否定的な局面を抱えた現在に対して批判的な目を注ぎ続けた湯地の仕事は、埋もれた状態にあるが、再評価されてしかるべきであろう。
二松学舎大学東アジア学術総合研究所集刊
二松学舎大学東アジア学術総合研究所
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