『往生要集』の「厭離穢土」の章には、男色を行なった者は地獄に堕ちるということが記されている。ところが、実際には、貴族や僧侶たちは、『往生要集』に記された地獄についての箇所に大きな衝撃を受けたものの、それらの詳細にはほとんど関心を持っていなかったのである。貴族の日記には、堕地獄の要因の詳細についての記述は見えず、極楽往生のための念仏についての記載が多く記されているのである。ちなみに『往生要集』以外では、当時において大きな影響を与えた書物の中に、僧侶と稚児の交わりを否定するものはない。このようなことから、比叡