「美麗」しき狭手彦――『肥前国風土記』「鏡渡」の検討――
日本文学協会第41回研究発表大会
二松学舎大学
本発表は、『肥前国風土記』「鏡渡」を検討することにより、他の風土記にはない語り口を持つ始祖譚として当該記事を位置付けることを試みたものである。当該記事については、王権の論理や編纂者の意図に支えられた文芸性という方向から検討がなされてきたが、子孫を成す、あるいは祭祀を行うという記述を持たないこの記事が如何に始祖譚と成り得ているかについては検討の余地が残されている。本発表では、当該記事の記述を検討することにより、始祖譚としての書記の意識が看取されることを説いた。