「美麗」しき狭手彦――『肥前国風土記』松浦郡/鏡渡・褶振峰の検討
本稿では『肥前国風土記』松浦郡に載る鏡渡・褶振峰の記事を検討することにより、祭祀の開始と氏族の根拠を示す始祖譚として当該記事を位置付け試みた。当該記事において狭手彦は神に成り得る存在として記され、後に地域の神として鎮座することとなる。斯様な狭手彦と地域の名を背負った弟日姫子の「成婚」は、彼女が神に奉仕する存在となったことを示しており、地域の有力氏族である日下部氏の根拠をも示すこととなるのである。
『日本文学』
日本文学協会
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