『殷富門院大輔集』法文歌考
殷富門院大輔が『最勝王経』を詠んだ法文歌を考察した。作者は助動詞「き」が現在では存在しない過去のことを表し、不在感を導き出すことを生かして歌を詠んでおり、また当該歌と同じような「かなし」の多義性を生かした先行作品を確認し、その作品を踏まえ、殷富門院大輔が「かなし」が両義に解釈できるようにして仏の尊い行為の裏側にある遺された家族達の嘆きの気持ちをも歌の中に含めようという意図で歌を詠んだと結論づけた。
二松學舍創立140周年記念論文集
二松學舍大学
135
155