『三国志演義』において関羽は非業の死を遂げた後、真夜中に空中をわめきながら飛び回り、さらに仇である呂蒙や曹操に祟る。その所業は怨霊そのものといってよい。しかし、一方で関羽は後世に神格化されて「関帝」となり、現在でも中華圏で最も信仰を集める神といわれる。「関帝信仰」の文脈における関帝像は、『三国志演義』に見える怨霊のような関羽とは大きな懸隔がある。そこで本報告では、まず歴史上の関羽の生涯を確認してから、英雄である関羽が怨霊のように語り伝えられる段階を経て、どのように中華圏において上下を問わず信仰される神へと