洪邁と関帝信仰――『容斎四筆』巻八「寿亭侯印」を手がかりに――
『容斎四筆』巻八「寿亭侯印」を手がかりにして、著者洪邁の関帝信仰に対する態度を考察した。南宋期に相次いで出現した「寿亭侯印」を実物でないとする洪邁の分析は冷静で客観的だが、同じ結論を出す後世の知識人のような関帝に対する信仰心は感じられない。かかる洪邁の態度は同時期の知識人と共通し、特別なものではなさそうに見えるが、洪邁の経歴に目を向けた時、自身や家庭が南宋の脅威であった金によって不幸に見舞われたことから、軍神とされる関帝への不信感や怨みがあったことが看取される。
狩野直禎先生追悼 三国志論集
三国志学会、汲古書院(発売)
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